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初出:2010年1月 1日 11:11

《前回のお話はこちら》

ランブリン

明けましておめでとうございます。2010年1月1日、もうランブリンは皆の手の中で、時と場所とつぶやきを発信しています。そう、2009年12月29日の深夜0時過ぎ、無事にiTunes App Storeで販売を開始しました。350円。

「なんだよ! 有料かよ!」と思われる方もいるでしょう。

「はい、有料にさせていただきました! 趣味で作ったものであれば無料で配りますけど、平日昼間をすべて費やした一応お仕事なんで。」

「それでも350円は高いってぇ!」と思われる方もいるでしょう。

「はい! この極度に不景気のご時世、350円がなかなか思い切った値付けなのは重々承知! でもデフレ的安売り商売に行くよりも、これから時間をかけてでも350円の満足感を得られるよう、スタバのラテ一杯分の満足感を年中提供するよう頑張りますので、何卒ここはひとつ! 」

...ということで、ランブリン、今後ともよろしくお願いいたします。
はい、年始の挨拶とランブリンの意気込んだ宣伝を一度にビシーっと済ませた上で、今回も昔話をしましょう。

実はちょうど一年前、「場所のつぶやき」というランブリン構想の初期モデルをすでに構築していた。2008年12月から2009年1月末までの間、「情報大航海」という経産省プロジェクトの一環として作った携帯電話向けサービス「Moyoli」がそれだ。とは言っても、たかだか2ヶ月弱のみの期間限定実験サービスだし、一都三県で千名程度が使っただけに過ぎないものだった。そして、長く続けても「In My Place」構想(2008年5月に描いたランブリンのマスタープラン)全体の青写真にも近づけないほど、日本の携帯電話とそれを取り巻く環境は制約が多すぎることを実感した(それは今も変わっていない)。

ランブリン画面設計書

そこでMoyoliプロジェクトの後処理が続いてた2月に、iPhoneで動かすことを想定した画面設計書を書き始めた。サービスの構成はほぼMoyoliがベースになっているものの、iPhoneのUIの自由度があってこそ当初の理想に近づける部分も多々あるし、それ以上にメッセージング部分は完全にTwitterを使うことを前提にしていた。

Infolore情報伝達モデルしかし当時のTwitterに欠けていて、かつIn My Place構想には絶対に欠かせない概念が自分の中にはあった。情報が引用されて人づてに伝搬していく情報伝達のモデルであり、僕はそれを「InfoLore」という名付けた。InfoLoreは、人から人へ、場所から場所へと情報が伝承(Infomation lore)されていく、情報伝達モデルだ。例えば、渋谷の街で起こったことを誰かがつぶやくと、その周辺にいる人へ伝達される。その人達が移動した先々で「引用してつぶやく」ことで、その周辺にいる人達に伝承されていく...。Webのように情報をサイトに置けば世界中からアクセス可能になるのではなく、人が情報を取捨選択し、有用だと思えるものを他人に伝えていくことで、本当に力のある情報が、場所を渡り、時をかけて多くの人達に伝承されていく。そして重要なのは、伝承の過程で文章がどんなに改変されても引用元の文章をすぐに参照できること...。そんなモデルがInfoLoreだ。この「InfoLore」という言葉は、まったく周りからの理解を得られなかったが、僕はとても気に入っている。

ただ、InfoLoreという概念を声高に提唱することはもうないだろう。そう、これはReTweet(RT)そのものなのだから。RTの発祥がいつなのか定かではないが、僕がTwitter上でRTの存在を知ったのは2009年4月頃だった。これを知ったとき、本当に焦った。自分が考えつくことは、当然他の人も考えつく。こりゃまごついていると位置情報+つぶやきだってなんだって、すぐに先を越されて、使い古されたものになってしまう。

しかし会社組織というのは、なかなかクイックな動きを取れないものだ。そこには資金面をはじめ色々な理由がある。分かってはいるし、逆に自分一人で構想を実現できるほどの力も能力も、それこそ資金もない。しかし、一方でTwitterは国内でも日に日に勢いを増し、一方ではロケーションベースのメッセージングサービスもどんどん登場してきている。ランブリンの開発が始まる9月までの半年は本当に長かった。正直、2009年中に動きが無かったら、まったく違う手段を考えようとすら思っていた。いつどんなときだってPlan-Bを想定しておくのは大事なことだからね。

でも、ランブリンは立ち上がった。最初に描いた「In My Place」という青写真にはほど遠いし、皆に使ってもらうことで宿題が山積みになっていく感じもする。だが日々の宿題を片付けるのもなかなか楽しい。そして、青写真を現実にするための具体的なアイデアもしっかりある。

そういえば、昨年末に本家TwitterがGeoAPIの会社を買収してた。TwitterのCEO、Evan Williamsが買収に関するコメントとして「tweet(つぶやき)に現在の位置情報が追加されれば、価値ある新たなサービスが誕生するだろう。最新ニュースから友人や地域企業の検索まで、すべてが劇的に改善される可能性がある」と語っているが、これはTwitter自体が位置情報を主戦場のひとつとして認めた最初の発言だと思う。2010年はタフな一年になりそうだ。


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